Curry on Mars ?

アイナ・ジ・エンド / THE END

f:id:dj_dagobah:20210418015557j:plain

今や、BiSHやWACKの歌ウマ担当という存在を超え、邦楽界でも一目置かれる歌姫にまで成長したアイナ・ジ・エンド。
BiSH加入前から音楽活動をし、自作曲をYouTubeやSound Cloudにアップしていた彼女が、満を辞して放ったソロデビュー作。
彼女のソングライターとしての才能と、楽曲の完成度を一層高めるその歌声とを、存分に堪能できる一枚。

リード曲の「金木犀」を聴いた時に、こんなジャズ的なアプローチのアレンジ、珍しいな!と思ったら、今作の主なプロデュースは亀田誠治と聞いて納得。音作りもアレンジも、非常に良い仕事をしています。



コロコロ変わるアイナの表情のように、楽曲のキャラも多彩。
メロウで大人な「金木犀」、ノイズやドローンの匂いが漂う「虹」、牧歌的な「日々」「スイカ」、アップテンポな「STEP by STEP」「サボテンガール」、スロウな「死にたい夜にかぎって」といった具合に。


彼女が敬愛する阿部真央椎名林檎からの影響を感じる曲もチラホラ。そこにアイナのポップなソングライティングと、詞においては他者に寄り添うような優しい視点を加えて、オリジナリティを出しています。

個人的なお気に入りは、美メロとドラムのタメと間奏のエレピが最高に気持ちいい「死にたい夜にかぎって」と、ハネたビートとピアノでポジティブな気持ちになる「サボテンガール」。

今作をリリースするキッカケになったのは、WACK社長・渡辺淳之介と将来の展望を話した事だそうです。
「今後も歌を歌っていきたい」という彼女に対しての「それなら自分で曲を作れるようになった方がいい」という渡辺の言葉によって、曲を書き溜めるようになり、曲を書いては渡辺とエイベックスに送り、その内にアルバムを作ろうという話になったとのこと。
BiSHがデビューしてちょっと経った頃、曲を作っていた事を知っていた僕は、当時彼女がツイッターで時折やっていた『リプ返タイム』に、今でも作曲しているの?と、リプを送った事がありました。すると「たまに作ってるよ!」と返してくれました。今となっては僕の大きな自慢です(笑)。
それが渡辺に言われて曲を書き溜めるようになった時期と重なるのかは不明ですが、彼女が積み重ねてきたものが、こうして一つの素晴らしい作品に結実したこと、非常に嬉しく思います。

アイドルの中でも、特に地下アイドルというのは、大小様々な理由で活動を停止したり、その世界から消えてしまったりと、非常に儚い存在であります。
WACKはメジャーな存在になりましたが、良くも悪くも地下アイドル的である事を突き通し、BiSHも以前ほどではないかもしれませんが、そういう活動方針を続けています。
今作をリリースした事で、アイナ・ジ・エンドは地下アイドルという存在から、俗っぽい言い方にはなりますが、ひとりの「アーティスト」という存在にもなったのだと感じました。
今後BiSHが解散したり、彼女がグループや事務所を離れるような事があったとしても、音楽家としてこの世界に留まり、音楽を届け続けてくれるだろうと思わせる、成長と未来を感じられる作品です。

Amazon.co.jp
TOWER RECORDS ONLINE

THE END

THE END

  • アイナ・ジ・エンド
  • J-Pop
  • ¥2037