Curry on Mars ?

THE YELLOW MONKEY / jaguar hard pain

Jaguar Hard Pain

「自分たちなりのデヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』を作る」という意向のもと作られたコンセプト・アルバム。

1944年に戦死した兵士"ジャガー"の魂が、1994年にタイムスリップし、恋人"マリー"を探すというストーリーになっています。


前作で提示した、日本の歌謡曲やヨーロッパの古いポップスの要素を引き継ぎ、隠微で危うい雰囲気を漂わせ、聴いてはいけない物を聴いているのではというスリルを感じさせる作品です。

またサウンド面では、演奏や歌唱のテンションが高く、これまでと比べるとハードロック色の濃いアグレッシブな仕上がり。

「君の大切なVAGINAが泣いてる」だの「石で性器を潰しても君を好きでいられる」だの「首吊りの木で出来たギター」だの「尋問・連行・仮釈放、僕は見かけ通りさ」だの、これまで以上に退廃やエログロを感じさせるエグ味の強いパワーワードが炸裂する歌詞が、危うさと攻撃性に拍車をかけています。

それでいて、コンセプトアルバムなだけあって全体の統一感はよく、聴いていて疲れる作品ながらも不思議とサラッと通して聴けちゃいます。

https://youtu.be/CIygDo2hdX8

 

イエローモンキー最強のアンセム「悲しきASIAN BOY」、ライヴで定番のアップテンポなナンバー「ROCK  STAR」、ハイテンションな「薔薇娼婦麗奈」「A HENな飴玉」、古いフランスのポップス風な「街の灯」、ボウイ「ロックンロールの自殺者」を彷彿させるバラード「Merry X'mas」など、充実の楽曲群。

https://youtu.be/aybZMQxs6lY

 

初期イエローモンキーの、グラムロックをベースに築き上げた耽美と退廃の世界観の到達点であり、それを分かりやすく聴ける作品でもあるため、初心者にもおススメです。

THE YELLOW MONKEY / EXPERIENCE MOVIE(未公開のエクスペリエンス・ムービー)

EXPERIENCE MOVIE (Remastered)

これまたダサいジャケとタイトルの2作目。
インディーズ時代のアルバム「Bunched Birth」の、陽の部分に焦点を当てたのが1st「夜行性のかたつむり達〜」としたら、陰の部分はこちらの2ndです。

グラムロックをベースに、歌謡曲シャンソン、タンゴといった、ロック以前のポップミュージックの要素を取り入れ、耽美な雰囲気に充ちた作品。
吉井和哉は、美輪明宏あがた森魚の影響を受けたと公言しており、それが最も炸裂している時期のものです。

youtu.be

加えて少し不気味な雰囲気もあり、一曲一曲が重く、それでいて地味で、個人的には聴くのに覚悟が必要なアルバムでもあります(笑)。 しかしながら、ライヴではほぼ必ず演奏されるテンション高めのグラムナンバー「SUCK OF LIFE」を始め、ポップなシングル曲「アバンギャルドで行こうよ」、美しいメロディの歌謡バラード「フリージアの少年」、アップテンポな「審美眼ブギ」「LOVE IS ZOOPHILIA」、次作「Jaguar Hard Pain」への伏線である長尺バラード「シルクスカーフに帽子のマダム」など、地味ながらも良曲が揃っているアルバムです。

youtu.be

 

Amazon
TOWER RECORDS ONLINE 

 

THE YELLOW MONKEY / THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)

THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE

寒気のするほどダサいジャケット、意味不明な長ったらしいタイトル、聴く前からスベリまくっている、イエローモンキーの記念すべきメジャーデビューアルバム(笑)。
見る人が見れば、デヴィッド・ボウイに影響を受けたバンドなのだろうと、かろうじて分かってもらえるくらい。
音楽性もグラムロックに傾倒しており、1992年のアルバムとは思えないほどの時代錯誤っぷり。
しかしながら、これが傑作。

前作「Bunched Birth」が陰と陽のバランスが取れた作品でしたが、こちらはその陽の部分を拡大させた作品と僕は捉えています。
あやしげで何言ってるかよく分からない歌詞の世界観とは裏腹に、お馬鹿な感じのメロディとアレンジが可愛いらしい曲が並びます。
上記の要素が炸裂しまくったデビュー曲「Romantist Taste」や「Subjective Lateshow」、エマちゃんのギターソロが最高すぎるアンセム「真珠色の革命時代」など、ライヴでもお馴染みの素晴らしい曲が数多く収録されており、初心者にもおススメです。

youtu.be

それから、イエローモンキーというバンド及び、バンドの大多数の曲を書いているボーカル・吉井和哉は先達のミュージシャンへのオマージュが物凄く得意なのですが、このアルバムでもそれが遺憾なく発揮されており、上述の「Subjective〜」と「真珠色〜」はそれぞれデヴィッド・ボウイの「ダイヤモンドの犬」とモット・ザ・フープルの「すべての若き野郎ども」へのオマージュと思われます。
そういう発見でニヤニヤするのも、このバンドの楽しみ方の一つと思っています。

 


1991.12.28 THE YELLOW MONKEY Subjective Late Show @渋谷Lamama


Amazon
TOWER RECORDS ONLINE

 

THE YELLOW MONKEY / Bunched Birth

BUNCHED BIRTH

4月17日、ザ・イエローモンキーの19年ぶりのオリジナルアルバムがリリースされます!
それを祝し、イエローモンキーのオリジナルアルバム全作のレビューを、毎日アップしていきます!

第1回目は、インディーズ時代にリリースされたこちらのミニアルバム。
ライブでは定番の「WELCOME TO MY DOGHOUSE」や、バンドが生み出した最初の曲であり、後にシングルのカップリングとして再録されベスト盤にも収録される「LOVERS ON BACKSTREET」といった、ファンの間で人気のある曲も収録され、初の音源でありながら完成度の高い作品です。


WELCOME TO MY DOG HOUSE

 

全体的に退廃のムードを漂わせながらも、ハードロックやグラムロック、歌謡曲を軸に、いい具合に間の抜けたポップで聴きやすい楽曲が揃っており、初期イエローモンキーの音楽性が既に完成されています。


ラヴァーズ

 

デスメタルのバンドみたいなジャケットですが、身構えると肩透かしを食らうくらい、中身はポップです(笑)。 余談ですが、そのジャケットを手がけた寺田亨氏は、後にメジャー4th「smile」と、吉井和哉のソロアルバム「the apples」と「after the apples」のジャケットを手掛けています。

 

Amazon TOWER RECORDS ONLINE

【旧譜レビュー】Nivana / Nevermind

f:id:dj_dagobah:20190406024624j:plain


もはや説明不要、ロック史に残る超名盤。

僕はニルヴァーナの作品の中でこの「ネヴァーマインド」が一番好きです。

 

カート・コバーンの激しいギターと、時として血を吐いてしまうこともあったと言われるしゃがれさせた声、クリス・ノヴォセリックのミッドブーストが効いた硬いベース、デイヴ・グロールの、技巧派ではないものの力強く歌っているかのようなドラム、そして激しいながらも聴き手に寄り添うような親しみのあるメロディ、全てが胸を打ちます。

 

代表曲「Smells Like Teen Spirit」や「Lithium」「Come As You Are」などを収録。これまで何十回と聴いてきましたが、今だに聴くたびテンション上がってしまいます。

他にも「Breed」と「Lounge Act」が個人的にはお気に入り。


Nirvana - Lithium (Live at Reading 1992)


Nirvana - Breed (Live At The Paramount/1991)

 

僕はニルヴァーナの魅力の一つに「単純さ」があると思っています。

4小節のコード進行をメロでもサビでもひたすら繰り返し、ギターソロも単音中心。

正直、ギターや作曲の初心者でも作れそうなものばかりです。

しかし単純さを突き詰めると、純粋に素晴らしい物が生まれる。

それを僕に教えてくれたのが、ニルヴァーナというバンドです。


Nirvana - Smells Like Teen Spirit

 

そしてその単純さやパンキッシュな音楽性とは裏腹に、サウンドは実に綿密に作られています。

ブッチ・ヴィグのプロデュースにより、音が整えられ、ノイジーながらも聴きやすく、適度に

厚みのある音色になっています。

また多彩なエフェクトで音色に幅を持たせ、聴き手を飽きさせません。

地下のスタジオや自宅の薄汚いガレージで演奏している光景が浮かぶ反面、夏の海沿いをオープンカーでドライブするような爽やかさをも感じさせるサウンドです。

これには賛否両論あるようですが、アングラ感とメジャー感を両立させたこのサウンドが、今作を名盤たらしめている要因の一つである事は間違いないと思っております。

そして今作の大ヒットが、後にカートを悩ませることになってしまうというのも、ドラマがあってまたイイなぁと思います。

 

カートが亡くなって、四半世紀が経ちました。

残した音楽は聴き続けられ、リスペクトを集め続けています。僕も曲作りの部分で影響を受けました。

今日はライヴDVDを見ていましたが、明日はアルバムを聴こうと思います。

お師匠さま、これからもよろしくお願い致します。

NEVERMIND/REMASTERED

NEVERMIND/REMASTERED

 

 

 

CHAI / PUNK

PUNK

"NEOカワイイ"を標榜し、スーパーオーガニズムのワールドツアーでオープニング・アクトを務めたり、バーガーレコードと契約したりと、日本のみならず世界からも注目を集めるCHAIによるセカンドアルバム。


めちゃくちゃにキャッチーなビジュアルと声を持っている時点で反則レベルに強いのに、音楽そのものも凄い。

これ聴かされちゃったら踊らない訳にはいかないよね、というグルーヴと、これまたキャッチーなメロディ。

空間に染み渡るようなキーボードと、ミュートを効かせてリフとアルペジオに徹するギターは、The 1975にも似ていると思ったり。

あと、親しみやすい見た目とでインディポップ的な音楽性のガールズバンドというと、やはりチャットモンチー以降の流れを汲んでるのかなと思ったのですが、コーラスワークや声の感じからはジュディマリ(YUKIちゃん)を感じたりも。

 

歌詞に関してはとにかくポジティブで、聴いていてパワーをもらえます。

反面、自分はスゴイとか、誰でもカワイイとか、コンプレックスすら長所になりうるとか、そういう、私はこうする!私たちはこうしたい!みたいな曲が多く、聴いていて少し疲れる面もあります。

そのポジティブさでリスナーを引っ張るパワーは持っているので、聴く側に寄り添うとか、逆に一歩引いた感じの詞があると、幅が広がるのでは、と感じました。


とはいえ、良盤です。

もしかしたら2019年、これを超えるインパクトを持った作品は出ないんじゃないか…と不安さえ覚えるほどです。


お気に入りは、去年リリースしたEPにも収録された「アイム・ミー」。

ちょっと切ないメロディとツービート、基本的にはルートを刻みながらもオイシイ所でハイポジションにドライヴする盛り上げ上手なベースライン、ニルヴァーナ「リチウム」風のコード進行と、僕のツボをつきまくりな一曲です。

同じくEP収録の「フューチャー」もイケてます!

 

PUNK

PUNK

 

 

 

GANG PARADE / LAST GANG PARADE

ãlast gang paradeãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

ライブやイベントの動員も増え、メジャーデビュー、日比谷野音大阪城音楽堂でのライブも決定。着実にスターダムにのし上がりつつあるギャンパレの4thアルバム。

前作「GANG PARADE takes themselves higher!!」は、代表曲「Plastic 2 Mercy」の3度目になる再録が入っていることからも明らかなように、メンバーの入れ替わりを経て、派手な髪色やヤンキー風ファッションでビジュアルを刷新し再出発を思わせるものでありながら、オリジナルメンバーであるカミヤサキがBiSへレンタル移籍で不在、代わってBiSから歌唱力・ビジュアル共に抜群なアヤ・エイトプリンスが加入という、強力でありながらも、いびつな状態でリリースされました。それにより、ポジティヴとネガティヴがない交ぜとなったドラマティックな状況に立たされ、ある種の諦念を抱きながらも、とにかく上を向いてやるしかねぇだろ!という熱さとクールさがパッケージされた、最高に素晴らしいアルバムとなっていました。


カミヤサキというグループの支柱が不在だった修行とも言える10ヶ月間、トレード終了に伴うカミヤサキの復帰、さらに2人の新メンバー加入を経て、大きく成長したグループが送り出す今作は、這い上がりや敗者の逆襲のようなドラマティックな曲もありはするものの、前作と比べると、全体としては余裕や達観を感じさせる、ポップでバラエティに富んだ作品になっています。


冒頭、数々の苦難を乗り越え、メジャーデビューという一つの到達点を掴んだグループの歴史とリンクさせた詞を、まさかのBiS「primal.」オマージュのロックバラードに乗せた表題曲「LAST」で始まり、カミヤサキ復帰のタイミングでリリースされたドラマティックな「GANG2」が次曲に配され、少し重いなーと不安になりましたが、『一緒に楽しもうぜ』とファンに語りかけるエレクトロファンク

「Message」から様子が変わってきます。

アジアを意識したメンバーの歌唱が笑えるのに曲は失恋バラードという珍曲「HERETIC」、キャッチーなメロディとロシア民謡風のアレンジが印象的な「Jelousy Marionette」、ゲーム音楽風ハードロック「正しい答えが見つからなくて」、失われた過去への後悔や慕情を歌ったエレクトロバラード「BOND」、そして個人的お気に入りである、不自由な人生を強いられながらも、男を転がし強く生きようとする遊女を描いたヒップホップ「夜暗い夢」(タイトルのセンスもヤバい!)と、アルバム曲の完成度が非常に高いです。

 

バラエティに富みながらも、全体的なテンションはどちらかというとフラットな印象。バラバラなのに統一感が強いです。メンバー含め、運営や製作陣も同じ方向を向いているからこそ、こういう作品になったのかなと思います。


怒涛のスケジュールでリリース、イベント、ライブをこなしていく彼女たち。

今年はさらなる躍進の年になると思います。

要チェックです!

 

LAST GANG PARADE

LAST GANG PARADE