Curry on Mars ?

THE YELLOW MONKEY / smile

 

smile

「売る」ことを意識し、これまでのグラム・歌謡ロック路線から、より多くの人に受け入れられる音楽性への変容を図ったメジャー4th。


サウンドはスタジアムバンドのような、ハードロック、ポップロック路線で派手に。

メロディもよりその時の流行に即したものになりました。

特に先行シングル「Love Communication」は、いかにも90年代J-POPといったメロディライン。

『寂しい夜には 裸になって 愛してくれ 求めてくれ 無邪気な手口で』という詞も、これまでの言葉遊びや退廃的なものとは一線を画す分かりやすさ。

「マリーにくちづけ」「イエ・イエ・コスメティック・ラヴ」「ビーナスの花」「熱帯夜」なども、一度聴いただけで覚えられるほどキャッチーで、非常にポップに作られています。

また「See-Saw Girl」ではレッチリを彷彿とさせるファンクロックをやってみたりと、新たな音楽性への挑戦もしています。

一方で「争いの街」や「サイケデリック・ブルー」あたりは既存の路線と、バラエティに富んでいます。


ただ、個人的にはそのバラエティの豊かさから、とっ散らかったアルバムという印象を持っています。

また、ポップ路線の曲も、聴いていて楽しめる曲ではあるけども、胸を打つ美しいメロディや詞、熱狂するほどの熱いオケによって感動を得られるような曲があるかというと、正直そこは弱く、また合いの手が入る曲が多いため、ワンパターンな印象も受けます。

ライブではバンドと一緒に歌って盛り上がれるような曲たちではありますが、良くも悪くも「ポップ」です。

ダメな曲が無い代わりに、ズバ抜けて良い曲も少なく、派手なはずなのに地味な、惜しいアルバムです。


しかしながらその地味な印象というのも、後の素晴らしい楽曲やアルバムがあってこそとも思います。

バンドの思惑通り、今作はこれまでより多くのセールスを獲得し、トップバンドへの足掛かりを掴みます。

絶頂期の、J-POP的なロックに洋楽や歌謡曲のエッセンスを加えた絶妙な音楽性の形成に、このアルバムでの挑戦が影響を与えていることは間違いなく、この点において今作は重要な作品であります。


高校生の頃にイエローモンキーにハマってからおよそ15年ほど経ち、最近になってようやくこの作品の良さが分かってきました…(笑)。

 

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