THE YELLOW MONKEY / 8
活動休止及びその後の解散の前に出た、最後のアルバム。
前作「PUNCH DRUNKARD」前後から続く吉井の苦悩が刻まれたような、暗い作品になっています。
チープな電子音や気を衒ったようなエフェクト、ファズを使ったギターの音色など、海外のインディ/オルタナティヴロック的な音楽性へと変化。
悲壮感が漂う暗いアルバムですが、「サイキック No.9」や「SHOCK HEARTS」など明るめの曲が入っていたり、意味不明でふざけたインタールード「人類最後の日」が入っていたりする辺りも、オルタナ感があります。
活動休止後に吉井が始めたソロ"YOSHII LOVINSON"でリリースされた2枚のアルバムもオルタナ要素の強い作品で、その萌芽も感じさせます。
僕が『終わりの始まり』と称した前作「PUNCH DRUNKARD」から今作までのバンドの活動について触れると、前作のリリース後、ツアーを回りながらバンドは「MY WINDING ROAD」と「SO YOUNG」という2枚のシングルをリリースします。
前者はキッス「I Was Made For Lovin You」やブロンディ「Atomic」を彷彿とさせるディスコナンバーでしたが、後者はシリアスなロックバラードで、自身の活動を過ぎ去った青春時代に例えるかのような歌詞でした。
その後、本作にも収録される「バラ色の日々」「聖なる海とサンシャイン」「SHOCK HEARTS」「パール」をリリースしますが、「SHOCK HEARTS」以外はいずれも喪失をテーマにした楽曲となっており、もともとバンドの曲が持っていた「悲しさ」「虚しさ」の要素が一層強くなります。
アルバム曲においても、アンドロイドを描いた「ジュディ」では"偽物"、「サイキック No.9」では超能力者の"破壊"衝動、SMをテーマにした「GIRLIE」や「バラ色の日々」カップリング曲の「HEART BREAK」では"傷"や"痛み"の要素が読み取れ、やはりネガティブなイメージです。
そしてそれらネガティブな要素を抱えながら、終盤の「メロメ」や「峠」では"旅"が描かれており、ボロボロだけれども続けていきたい、前進していきたいという思いにも取れます。
東京ドームでの活動休止前最後のライヴのMCでも、吉井は『俺たちが戻ってくるまで、強烈な人生を歩んでいてください』と語っており、バンド再開の意志があったことが分かります。
一方で、旅立ちを思わせる「メロメ」は、バンドというホームから離れるという風にも読み取れますし、「峠」の『次の峠まで歩いていかなきゃ』というフレーズは、"次の峠=ソロ"へ向かうとも読み取れる気がします。
今作リリース後、シングル「BRILLIANT WORLD」をリリース。
『最高な世界へ 何十年?何百年?何千年?何万年?何億年?何光年?何秒間?何秒間? 分かんないだけど君と I Will Go Brilliant World』という、やはりいつか帰ってくる事を宣言するような希望を感じさせる歌詞になっています。
その後、活動休止中に「プライマル。」をリリース。
『卒業おめでとう ブラブラブラ』『さようなら きっと好きだった』と、一転してファンに別れを告げるかのような、ひねくれながらも切ない卒業ソングになっています。
3年の活動休止期間を経て、結局バンドは2004年に正式に解散。
その後、希望の火をくすぶらせながら吉井はソロ活動を続け、他のメンバーもそれぞれの活動を続けていきます…。
このアルバムでの僕のお気に入りは、名曲「バラ色の日々」と切なく感情的ながらもどこか淡々とした雰囲気の「カナリヤ」、そしてイエローモンキー屈指のラウドロック「パール」です。
グランジを思わせる激しく真っ直ぐな演奏、普通ならネガティブなイメージのある『夜』を肯定的に捉える歌詞が好きで、『夜よ負けんなよ 朝に負けんなよ 何も答えが出てないぢゃないか』『君にまた言えなかった 夜がまた逃げていった』というフレーズは何度聴いてもグッときます。上手くいかない時は、いつもこの曲を聴きます(笑)。
イエローモンキーにハマった高校時代、洋楽にも興味を持ち、インディーやオルタナティブと呼ばれる普通とは一味違うロックがある事を知り、その方向のジャンルに傾倒していた僕は、イエローモンキーの中でもその要素が強いこの作品を聞いた時、かなりの衝撃を受け、毎日のように聴いていました。
個人的に、一番愛着のあるアルバムです。
19年ぶりの新譜リリースを記念してやってきた連続デビュー、今回で最終回となります!
お付き合いいただき、ありがとうございました!