Curry on Mars ?

カネコアヤノ / よすが

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既に邦楽史に残る傑作との呼び声高く、公演チケットやLPの価格高騰といった現象まで引き起こす程の評価を得た、カネコアヤノが2019年にリリースした前作「燦々」。
力が抜けたオーガニックな音作りのなか、その空気感をギリギリ崩さないレベルでの、絶妙なエレキの歪みやエフェクト。
少女の持つ無邪気さや無防備さを見せたかと思えば、その隙間から時折り覗かせる狂気や危うさにヒヤヒヤさせられる詞。
そして、こちらもまた少女っぽさがありながらも、何かを諦めたような、どこか投げやりにも聴こえる、決して上手いとか美しい部類には入らないけれども、とても魅力的なその歌声。
これらの要素が高い次元で合わさった、極上の一作でした。

 

あまりにも素晴らしい出来だったため、今作「よすが」のリリースが発表された時、僕の頭に浮かんだのは、期待感よりも「燦々」を超える物は出来ないだろうという思いでした。
しかし僕のそんな思いは杞憂に過ぎませんでした。それどころか前作に匹敵、下手したら超えているのではと思わせる瞬間も多々持った素晴らしい作品、それが今作「よすが」です。
カネコアヤノ、またしても傑作を出してしまいました。

 


と言っても音楽性は前作と良い意味でほぼ変わらず。ギターのリフやソロが印象的な曲が多くなり、よりロック的なアプローチになったかなという感じ。
「抱擁」でのザ・ラーズ「There She Goes」を思わせるリフや、「爛漫」のアークティック・モンキーズ的なリヴァーブをたっぷりに効かせたファズ、「腕の中でしか眠れない猫のように」での楽しげなスタッカートやソロが特にたまりません。



言葉選びのセンスも良くて、「まるで私が聞き分けの悪い赤子のように」とか、「いけしゃあしゃあと平気なふりをしたい」とか、「お前は知るのか季節の終わりに散る椿の美しさを」とか、強烈なパンチラインがドカドカ出てきます。

 

柔らかくて温かく、時にピリッとスパイスを効かせた今作の世界に浸かれば、あっという間の40分。
音をがっつり楽しみたい時にも、リラックスしたい時にもイケる良作です。
またしても名盤の風格。

ぜひご一聴ください!

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