BiSH / CARROTS and STiCKS
各種メディアへの出演や大規模な広告展開など、いよいよ大物感の漂ってきたBiSHによるメジャー3枚目のアルバム。
今作は"アメとムチ"をテーマに、まずはネガティブな作風の「STiCKS」、続いてポジティブな「CARROTS」という2つの4曲入りEPをApple Music限定でリリースし、その2作品にさらに6曲の新曲をプラスして一枚のフルアルバムにまとめ上げるという、新鮮な形態でリリースされました。
所属事務所 WACK社長の渡辺淳之介が「俺と松隈ケンタ( WACKサウンドプロデューサー)で好き勝手に作らせてもらいました」というだけあり、前作「GUERRiLLA BiSH」以降リリースされたシングルの楽曲は一切収録されず、独立したひとつのプロジェクトという位置付けになっており、気合の入った作品であることを感じさせます。
僕、正直もうBiSHはどうでもいいやと思ってたんです。
もちろんめちゃくちゃに楽しませてもらった恩もあるし、アイナ・ジ・エンドは存在が好きだから活動は一応追ってはいるものの、以前のように入れ込んではおらず。
前の方が良かったとか言っちゃうのってカッコ悪いと思うんですが、やはり単純に面白いと思えなくなってしまって。
大仰なストリング、起伏のないメロディ、ただヘヴィで速いだけのオケ…なんじゃこりゃ、と。
むしろ、「メジャーなのに"変"でいること」を意識し過ぎて、持ち味だったキャッチーさを失くしてしまってないか?と思っていました。
しかし今作「CARROTS and STiCKS」は、そんな僕のネガティブな気持ちを大きく揺さぶってくれる大傑作でした。
一応聴いておくかとiPhoneに落とした「STiCKS」を聴いて、完全にノックアウトされてしまいました。
聴き手を無理矢理ノセてしまうほどのアッパーなビート、ブチ切れたメンバー達のシャウト、一緒に叫びたくなるフックの聴いたフレーズが最高なリード曲「遂に死」。
ダンサブルなリズムとハードなギターの対比がカッコいいミクスチャー「FiNALLY」。
レディオヘッド「creep」を彷彿とさせるギターのアルペジオに、切ないメロディに自己嫌悪と自己愛を描いたダウナーな詞がグッとくる「優しいPAiN」。
『冷蔵庫の前 なぜか グレープフルーツだらけ』『君のこと食べてみたい』というフレーズや、音への言葉のハメ方がゆらゆら帝国を思わせる「FREEZE DRY THE PASTS」。
4曲とも素晴らしい出来で、また全体的に初期のギターインディっぽい雰囲気が復活しており、これ!俺が聴きたかったのはこういうのだよ!と涙が浮かぶほど感動し、今作への期待がめちゃくちゃに高まりました。
続いてリリースされた「CARROTS」もリード曲「I am me」を筆頭に、ポジティブな楽曲が並び、曲そのものもさることながら、プレイするのが楽しくてしょうがない!と言わんばかりにハネまくるギターにグッときました。
「CAN YOU??」の大サビで、モモコグミカンパニー著書のタイトルである『目を合わせるということ』というフレーズをぶち込んでくるのもエモい。
そしてそのインディな作風に寄せた2枚のEPを補完するように、壮大な雰囲気やヘヴィさを持った曲を含む6曲を加え、リリースされた今作。
切迫感のあるボーカルが刺さるリード曲「DiSTANCE」をはじめ、これまた良曲が揃います。
実際にPVが作られた曲が4曲ありますが、シングル切っちゃってもいいレベルの曲が何曲もあり、まるでベスト盤を聴いているように楽しめます。
ポップなテイストとダークなテイストの対比、全体に漂う高いテンション、「STiCKS」収録曲の、メロは静かでサビはうるさいというオルタナロック的な展開など、旧BiSのラストアルバム「WHO KiLLED IDOL」が持っていた雰囲気に似ているなぁとも思い、一つの集大成的な位置付けも持たせてるのかな、なんて勝手に思ったりもしちゃって。
ほんとそれくらいの気迫を感じる傑作です。
J-POP好きはもちろん、インディ・オルタナ好き、最近のヒップホップが好きな人にもおススメです!
ぜひご一聴ください。
CARROTS and STiCKS(CD2枚組+Blu-ray Disc)(初回生産限定盤)
- アーティスト: BiSH
- 出版社/メーカー: avex trax
- 発売日: 2019/07/03
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