GLAY / NO DEMOCRACY
平成を駆け抜けたGLAYによる令和初のアルバム。
今年でデビュー25周年を迎え、「民主主義」をテーマに据えた記念企画の目玉となる作品でもあります。
個人的には、2010年代のGLAY最高傑作だと思います。
他の作品が駄作であるとまでは言いませんが、正直なところ、100満点中30点の曲ばかりが並ぶ中で、たまに65点くらいの曲があるというのが僕の感想でして、悪くないけど、良くもないよねという状況でした。
また演奏に関しても特にギターに不満を持っており、「ギタリストが2人もいるくせなんでこんなにギターが前に出てこない曲ばかりなの?」とか、「『誘惑』とか『BELOVED』みたいな熱いギターソロを聴かせてくれよ!」というのが、2010年代のGLAYの曲に対して僕が持ち続けてきた思いです。
そんな僕の不満をようやく解消してくれたのが今作であります。
スッと入ってきて、かつしっかりと残るメロディを持つ良曲ばかり。
特に気に入っているのが、本作に先駆けてリリースされたEPにも収録されている「JUST FINE」。
教則本に載りそうな「いかにも感」がありながら、しっかりGLAYらしさも感じる力強いリフや、全盛期を彷彿させるHISASHIとTAKUROによるギターバトルやコンビネーションが最高に熱い一曲で、聴いた瞬間に今作への期待度が一気に上がりましたし、今でも毎日繰り返し聴いています。
キャッチーなメロディとダジャレのような詞もキュートで、GLAYの新たなアンセムとなるであろう名曲です。
その他、歌謡曲的な匂いも感じるメロディと疾走感がイカした、HISASHI作詞曲「MY NAME IS DATULA」。
黒いグルーヴに意外性を感じながら、サビではしっかりJ-POPしてくれる、冷めた恋や不倫を思わせる切ないスローバラード「氷の翼」。
チェンバーポップ的なアプローチのアレンジがこれまた新鮮な「誰もが特別だった頃」。
TERUによる、中年になった今の目線で父親の事を歌ったストレートな詞がグッとくる「COLORS」。
この辺りの楽曲が、個人的には凄くイイなと思っています。
また、社会派な楽曲の存在感が大きいのも今作の大きな特徴です。
「戦禍の子」はタイトルの通り戦時下で苦しみ死にゆく子供を描いていますが、聴き進めていくと戦地のみに留まらず、ここ日本でも問題になっている貧困や虐待に苦しむ子供にも当てはめる事ができる詞になっています。
それをあえてポップなメロディとアレンジに載せる事で、その悲哀が浮き彫りになっています。
「元号」はこれまたタイトル通り、元号が変わるという時代の移り変わりを描いており、昭和という過去の後悔、平成という現在への疑問、そして令和という未来への希望が歌われています。
このアルバムのタイトルを聞いたとき、「民主主義」をテーマに掲げて25周年企画をやってきたはずなのに、「NO DEMOCRACY」という否定形になったのは何故なのかと、面食らってしまいました。
しかしそこには、「結局今の世の中は完全な民主主義にはなっていない」という思いが込められているそうで、上に挙げた社会派な曲の存在とリンクします。
そしてこれは完全な蛇足なのですが、この拙文のタイトルのように『GLAY NO DEMOCRACY』と並べた時に、『GLAYのデモクラシー』とも読めるなと思い、民主主義が達成されていない世の中で、自分たちなりの民主主義をやっていくという宣言を込めたダブルミーニングになっているのかな…と勝手に思いました。
令和元年のこの日本で、力強く響く作品になっていると思います。
そして、平成に産み落とされ、愛され続けている名曲達と共にこの作品が愛され、そして更なる愛すべき素晴らしい曲を作り続けてくれる事を、これからも楽しみにしています!
お師匠方、令和もよろしくお願い致します!