Curry on Mars ?

アイナ・ジ・エンド / THE END

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今や、BiSHやWACKの歌ウマ担当という存在を超え、邦楽界でも一目置かれる歌姫にまで成長したアイナ・ジ・エンド。
BiSH加入前から音楽活動をし、自作曲をYouTubeやSound Cloudにアップしていた彼女が、満を辞して放ったソロデビュー作。
彼女のソングライターとしての才能と、楽曲の完成度を一層高めるその歌声とを、存分に堪能できる一枚。

リード曲の「金木犀」を聴いた時に、こんなジャズ的なアプローチのアレンジ、珍しいな!と思ったら、今作の主なプロデュースは亀田誠治と聞いて納得。音作りもアレンジも、非常に良い仕事をしています。



コロコロ変わるアイナの表情のように、楽曲のキャラも多彩。
メロウで大人な「金木犀」、ノイズやドローンの匂いが漂う「虹」、牧歌的な「日々」「スイカ」、アップテンポな「STEP by STEP」「サボテンガール」、スロウな「死にたい夜にかぎって」といった具合に。


彼女が敬愛する阿部真央椎名林檎からの影響を感じる曲もチラホラ。そこにアイナのポップなソングライティングと、詞においては他者に寄り添うような優しい視点を加えて、オリジナリティを出しています。

個人的なお気に入りは、美メロとドラムのタメと間奏のエレピが最高に気持ちいい「死にたい夜にかぎって」と、ハネたビートとピアノでポジティブな気持ちになる「サボテンガール」。

今作をリリースするキッカケになったのは、WACK社長・渡辺淳之介と将来の展望を話した事だそうです。
「今後も歌を歌っていきたい」という彼女に対しての「それなら自分で曲を作れるようになった方がいい」という渡辺の言葉によって、曲を書き溜めるようになり、曲を書いては渡辺とエイベックスに送り、その内にアルバムを作ろうという話になったとのこと。
BiSHがデビューしてちょっと経った頃、曲を作っていた事を知っていた僕は、当時彼女がツイッターで時折やっていた『リプ返タイム』に、今でも作曲しているの?と、リプを送った事がありました。すると「たまに作ってるよ!」と返してくれました。今となっては僕の大きな自慢です(笑)。
それが渡辺に言われて曲を書き溜めるようになった時期と重なるのかは不明ですが、彼女が積み重ねてきたものが、こうして一つの素晴らしい作品に結実したこと、非常に嬉しく思います。

アイドルの中でも、特に地下アイドルというのは、大小様々な理由で活動を停止したり、その世界から消えてしまったりと、非常に儚い存在であります。
WACKはメジャーな存在になりましたが、良くも悪くも地下アイドル的である事を突き通し、BiSHも以前ほどではないかもしれませんが、そういう活動方針を続けています。
今作をリリースした事で、アイナ・ジ・エンドは地下アイドルという存在から、俗っぽい言い方にはなりますが、ひとりの「アーティスト」という存在にもなったのだと感じました。
今後BiSHが解散したり、彼女がグループや事務所を離れるような事があったとしても、音楽家としてこの世界に留まり、音楽を届け続けてくれるだろうと思わせる、成長と未来を感じられる作品です。

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THE END

THE END

  • アイナ・ジ・エンド
  • J-Pop
  • ¥2037

 

2020年私的ベストアルバム

更新しようしようと思いながら、早くも3月に突入してしまいました。
遅くなりましたが、2020年ベストアルバムを。 洋邦混成で、10作品挙げます。
先にレビューを書いていたものは、そちらのリンクを貼っております。 それではどうぞ!

10. 070 Shake / Modus Vivendi
アメリカ出身のSSW/ラッパー、ダニエル・バルブエナによるプロジェクトのデビューアルバム。 美麗でありながらどこか不穏なメロディとアーバンな音作りから醸し出される、夜っぽい空気感がカッコいい一枚。ローファイなシンセからは90年代の匂いも感じます。
ショップやサブスクのカテゴリーではヒップホップに分けられる今作ですが、 むしろRhyeやWhitneyのようなインディロック的な雰囲気も強く感じられました。
弱冠22歳とのことで、今後の活躍にもおおいに期待したいです。


9. The Pretenders / Hate For Sale
存在は知りながらもちゃんと聴いたことがなかったプリテンダーズ。
ヴィヴィアン・ウエストウッドの21年春夏コレクションにおいて、ボーカルであるクリッシー・ハインドが描いた絵画の数々がフィーチャーされると いうことで聴いてみると、素朴でストレートなリフやメロディに胸を打たれ、軽くハマってしまいました。
そんなナイスタイミングでドロップされた新作。
パワフルな楽曲たちが、10曲30分というコンパクトなボリュームに収められた、潔いアルバム。
結成から40年以上を経て、これだけ素晴らしい作品んをつくれるというのは、かなり凄いことだと思います。
代表曲「Kid」を彷彿とさせるキュートなリフが炸裂する「The Buzz」が最高です。


8. BLACK PINK / THE ALBUM
女性K-POPグループとして初のコーチェラ出演、PVのYouTube再生回数ギネス記録、レディ・ガガやセレーナ・ゴメスなど大物とのコラボなど、 今や世界的な影響力も持ち始めたBLACK PINK。 待望のファースト・アルバムです。とは言っても既存の代表曲を収録をすることはなく、新曲で構成。 こういう、韓国のアーティストのミニアルバム主体のリリースって、不思議ですよね。
トロピカルハウスやEDM的なアレンジ・構成は少し古いかな?という気もしますが、それを黙らせるだけのメロディの良さや、転調で意外性を出すといった工夫を盛り込んでいるのがイイですね。 これによって、ヒップホップ好きもダンスミュージック好きもポップス好きも聴ける作品になっている。
それから最近は歪んだ反ルッキズムの考えが氾濫していますが、うるせぇ!可愛いは正義なんだよ!と言わんばかりのメンバーのビジュアルとファッションも最高です。
ちなみに僕はジェニが好きです。


7. GO TO THE BEDS / GO TO THE BEDS
カミヤサキ脱退に伴い、2つに分裂したGANG PARADE
こちらGO TO THE BEDS(以下GTTB)には、僕の推しであるヤママチミキちゃんを含めた古株メンバーが集められたグループです。
音楽性においても、GTTBはHR/HM風の楽曲を、もう片方のPARADISESはギターポップを中心とした楽曲をいう風に担当が分けられています。
少しずつスターダムへとのし上がりつつあった中で立て続けに起こったメンバーの脱退、グループの分裂、そしてコロナ禍・・・という逆境に呑まれた自らの現状を、ただじゃ死ねないとか、過去を振り払って前に進むとか、自分に嘘はつかないとか、痛みを引きずりながら前へ進む姿勢が刻まれた歌詞が多くなっています。 正直、そこまで自分を卑下する必要は無いし、グループの分裂は水面下ではある程度前々から決まっていた事である訳で、つまり予定調和のピンチと言わざるを得ないと、僕は思っています。 よって、サウンドやパフォーマンスは素晴らしいけれども、詞世界が聴いててちょっとしんどいし今ひとつ入り込めない部分があるなぁと。こちらは、今後の変化やバリエーションが増えることに期待したいです。

 

6. Beabadoobee / Fake It Flowers
フィリピン生まれ、ロンドン育ちの若きSSWのファースト。
1曲目の「Care」を一聴して連想するのは、ニルヴァーナをはじめとする90年代のオルタナティヴやギターインディ。 キャッチーなリフやフックの効いたメロディ、静かなメロと騒がしいサビという対比など、オルタナ要素が詰まっています。
彼女や、前述の070 Shakes、日本だとmegashinnosukeなど、当時ののカルチャーをリアルタイムで経験していないZ世代が90年代の空気を今の感覚で取り入れるパターン、すごく多いですよね。個人的には歓迎したい流れです。

 

5. リナサワヤマ / SAWAYAMA 新潟出身ロンドン在住、ケンブリッジ大卒という才女によるセカンド・アルバム。
サイバーパンクの世界観を連想させるアートワークや日本語を取り入れた曲名や歌詞、宇多田ヒカルのような2000年前後のJ-POPを思わせるメロディなど、全体的に日本がテーマとしてあるような気がします。
その世界観もあってか向こうでも注目されているようで、去年は「情熱大陸」にも出てましたね。要チェックな逸材です。

 

4. 阿部真央 / まだいけます
ポップで胸を打つメロディ、ロックでカッコいいアレンジ。
素晴らしいの一言に尽きる最高傑作です。

阿部真央 / まだいけます - Curry on Mars ?

 

3. PIGGS / HALLO PIGGS
理想を求めて旅を続けるプールイが、自分で会社を起こして結成した新たなアイドルグループ。 独立しRyan.Bという新たなパートナーを見つけながらも、渡辺淳之介カミヤサキ、SCRAMBLESといったWACK周りの面々とも仕事をし、これまでのファンをグリップしながらも新たな個性を獲得しようと挑戦しています。
グラムロックをテーマとしているというだけあり、デヴィッド・ボウイやヴェルヴェットアンダーグラウンドを想起させる曲名が並び、曲の中にもオマージュが感じられます。サウンド面においては、そこまでグラム感はないかも・・・?笑
とにかく楽曲のクオリティが高い。かつ松隈ケンタ的なメロディ、特に旧BiSの時期の雰囲気をよく再現しており、涙腺を刺激されます。Ryan.B恐るべし・・・。
作詞はメンバーも行うWACKスタイル。「PIGGS-モナ・リザ-」に出てくる『3度燃やしたギターがきしむ』という、旧BiS、2期BiS、BILIE IDLEとグループを渡り歩いてきたプールイを描いたフレーズにこれまた涙腺を刺激されました。
BiSは歌が下手なメンバーが多く、技術より個性で勝負するグループだったのですが、PIGGSはみんな歌がうまい。ビジュアルも良いです。
推しは金髪ボブのCHIYO-P。力強く伸びがありながらも、コーラスがかかったような一癖ある歌声が本当に素晴らしい。これまた涙腺を(以下略)
昨年末にライブも観に行きましたが、熱く素晴らしいパフォーマンスでした。
コロナ禍が収まり、声出し&モッシュできる状態でぜひとも観たいです。

 

2. The Strokes / The New Abnormal
原点回帰感のある、ミニマルな作品。 静謐さの中に透けて見える熱が、コロナ禍における外出自粛とリンクして心を震わせてくれました。

The Strokes / The New Abnormal - Curry on Mars ?

 

1. 藤井風 / HELP EVER HURT NEVER
曲名やYouTubeにカヴァー動画を上げていたという話から、歌い手やボカロP的なものかと構えてしまいましたが、その予想を見事に裏切られ、そのノリノリのビートと美麗なメロディに夢中になってしまいました。
オーセンティックなR&Bに載せられる岡山弁がユニーク。ポップ音楽における方言というのは、大体はポジティブな内容の詞に対してだったり、自分の出自をアピールしたい時、コミカルな雰囲気を演出したい時に使われることが多いように思います。
しかしながら、別れやディスコミュニケーションをテーマにした彼の詞の場合には、そのコミカルさがむしろ悲哀を強調し、岡山弁の持つ程よく力の抜けた感じが、ビートに上手くハマっています。ハマりすぎて詞が頭に入って来ないほど(笑)。
ぜひライブを観たいと思い何度かチャレンジしましたが、まったくチケット取れず・・・。しかし彼のような素晴らしいアーティストがしっかり売れているというのは、素晴らしいことです。今年は観たい!!

 

こんな感じで10作、ご紹介しました。
2021年も素晴らしい作品とたくさん出会えますように!

The Strokes / The New Abnormal

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実に6年ぶりに届けられたストロークスの新作。
ちょうど日本で非常事態宣言が出された直後にリリースされ、未だかつて経験したことのない状況に対する不安と、台風の時の休校日のようなテンションの高さとがないまぜになった感情に強く響いたのを記憶しております。

原点回帰と言わんばかりのミニマルさ。
シンセや打ち込み(電子ドラム?)を取り入れたアレンジ、コーラスを多用したギターの音色からは、どこか冷たさや物寂しさを感じるものの、繰り返されるリフやアルペジオ、そしてアレックスの天に登りつめていくようなボーカルによって、曲が熱を帯びていく様が非常にエモーショナル。


お気に入りはこちらの「Selfless」なのですが、メロディや幽玄な曲の雰囲気の美しさもさることながら、MVが「誰も知らない」の映像を使ってるのも良くないですか。

それから、今作のシンセを使った音色はどこかレトロな雰囲気を醸し出しています。
これは僕の妄想なのですが、アークティック・モンキーズの「Tranquility Base Hotel & Casino」に触発された部分からがあるのではと思います。
かつてストロークスに憧れたアークティック・モンキーズが成長し、彼らの作品にまたストロークスが影響される…。
まるでビートルズの「ラバーソウル 」に触発されてビーチ・ボーイズが「ペット・サウンズ」を作り、またそれに影響されたビートルズが「サージェント・ペパーズ」を作ったような…。
そういうドラマ的なものも、勝手に感じてしまいました。


かなり良い作品です。なんなら、ここに来て最高傑作なのでは!?と個人的には思っております。
2011年に「Suck It And See ?」を聴いてアークティック・モンキーズに本格的にハマったように、この作品によって僕の中でストロークスが大きな存在になっていく気がしています。

 

ザ・ニュー・アブノーマル (通常盤)

ザ・ニュー・アブノーマル (通常盤)

 

 

 

 

阿部真央 / まだいけます

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デビューから10年が経ち、30歳を超え、アーティストとしての旬はとうに過ぎたと言われてもおかしくない時期。

そのタイミングで阿部真央が送りだした9枚目のアルバムは、「まだいけます」という自虐的なタイトルとは裏腹に、初期衝動的な勢いと同時に円熟味を持ち合わせ、トガりながらも優しさのある、むしろ最高傑作と呼んでいいほどの非常に優れた作品に仕上がっています。



阿部真央という人はとにかく良いメロディを作るのが上手い人なのですが、今作はその才能が全編に渡って爆発しまくり、それを彩るアレンジもこれまでの作品と比べても疾走感のあるギターロック寄りになっており、個人的にグッと来ました。



そしてもう一つ凄いと思ったのが、基本的にやってる事がずっと変わってないということ。

力強く美しいメロディに載せられる、他社とのディスコミュニケーションや、アウトサイダーへの応援歌、様々な恋模様をテーマにした歌詞はデビュー当初から彼女の根幹にある物。

作品の構成で言えば、アルバムの最後はアコギの弾き語りで締めるというのも、ずっとやり続けている事です。

音楽性を大きく変えずに、ただひたすらに良い物を作り続けるというのは難しい事です。

陳腐化したり、アレンジの質が落ちたり、歌詞や、そもそもメロディがつまらなくなったり…。

しかし彼女の場合、同じ事を続けて陳腐化しながらも、常に良い物を作り続けていることが本当に凄い。

もちろん、「今回のアルバムは微妙だったな…」とか、「こんな曲、前にもあったよな」と思うこともありますが、作品のどこかに必ずフックとなる部分が何箇所かあって、最終的には、良いアルバムを聴いたと思わせる力があります。

魅力を磨いて磨いて磨き続けると、眩く輝くのだという事を見せつけてくれる稀有な例。


ぜひ多くの人に聴いて欲しい作品です。

 

まだいけます(初回限定盤)

まだいけます(初回限定盤)

  • アーティスト:阿部真央
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: CD
 

 

俺が持っている「Rubber Soul」のレコードは初期プレスなのか!?の巻

今回はレビューではなく、レコードのお話。

僕はレコードもジーンズも酒もギターも好きですが、いわゆるヴィンテージというものに興味がなく、だいたい新品とか、安い中古を買っています。

しかし昨日、週明けから営業再開したディスクユニオンに行って久々にレコードを見ていると、他のジャンルに比べて手を出しやすい方の値段ではあるし、「アビイ・ロード」なら、めちゃくちゃ好きだから初期のプレスとか買っちゃってもいいかなぁなどと、思ってしまったのであります。

そして、自分が「ラバー・ソウル」の初期プレスと言われる盤を持っていることを思い出しました。
その盤と出会ったのは2011年、僕がイギリスのロンドンで語学留学をしていた時のこと。
ヒュー・グラントジュリア・ロバーツの映画で有名なノッティング・ヒルのポートベローという通りでは、日曜になると様々な露店が立ち並ぶフリーマーケットが開催されます。
ある日曜、フリーマーケットに立ち寄ってみるとレコードを売っている人がいたので、適当に見てみると、大好きな「ラバー・ソウル」が。モノ盤で、なんと「UK 1st Press」と手書きのシールが貼ってあります。お値段わずか2500円ほど。「ホントかよ!?」と思いながらも、まぁ実際古そうではあるし、現行の新品もこのくらいの値段だし、嘘だとしてもなんかの記念になるだろ。と、これまた適当な気持ちで買って帰ったのであります。

果たしてこれはUK1stなのか?と、とりあえず気にはなったのでネットで検索してみると、なにやらレコードにはマトリクスというシリアルNo.的なものがあり、これで判断できるとのこと・・・。

ここで、そもそも何故レコードは古いほうが良いとされているのか?UK1stプレスって何?ということをお話しします。
レコードの製造過程をザックリ書くと、
マスターテープ(アーティストが作った、大元の音源)

ラッカーマスター(マスターからおこした金型)

メタルマザー(ラッカーマスターは保存に向かないので、保存用におこされた金型)

スタンパー(メタルマザーからおこした金型。これを塩化ビニールに押し付ける)

レコード

と、なるようです。
レコードを作る時につかうスタンパーは、繰り返し使用すると当然劣化するので、またあらたにメタルマザーから作るそうで、そうなると、結果メタルマザーも劣化していきます。新しいメタルマザーを作るためにラッカーマスターに・・・と遡っていくと、結果全てのものが、ゆくゆくは劣化していく訳です。
よって、最初に、最も新鮮な状態でプレスされたレコードが、最も音が良いとされているのだそうです。
さらに、ビートルズはイギリスのバンドだったので、音源の制作や、その生産も基本的にはイギリスで行いました。
よって、上記の要素も輸出用のものよりも国内向けの方がより優先度が高く、新鮮だったため、UKでの1stプレスが至高とされている訳です。
ちなみに、もっと細かく言うと、そのスタンパーで何回プレスしたのかという違いもあるにはあるはずなんですが判別方法は無く、さすがにそこまで突き詰めるのは無理みたいです(笑)。

さて、僕の「ラバー・ソウル」は果たして1stプレスだったのか?というところに話を戻します。レコードに刻まれたマトリクスが、1stであればズバリ「1」とかいてあるとのこと・・・僕の物を見てみると・・・

 

 

「4」と書いてありました・・・。

 

 

やっぱり1stじゃないじゃん!と、ちょっとだけ意気消沈しましたが、聴いてみると音はいい感じだし、まぁ思い出として自分の宝物にしておこうと、この話題については興味を失っておりました。

そして数年が経ち、昨日ディスクユニオンで古い盤に少しだけ興味を持った僕は思ったのです。
自分が持っている「ラバー・ソウル」はどういう盤なのか、改めて調べてみようと!
前フリが長くなりましたが、検証開始です!

まずはジャケット。

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おなじみのジャケ。
写真だと分かりづらいですが、古いだけあってぶっちゃけ汚いです(笑)。

そしてインナースリーブ。

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うん、これまた汚い。
破れてレコードがはみ出ちゃってるし、元の持ち主の名前まで書いてある。
中古のファミコンとかゲームボーイのカセットみたい(笑)。
割とレコードあるあるかなと思いますが、まぁこれはこれで、なんかイイもんですよね。

そして、盤!!

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これまた写真だと分かりづらいですが、50年以上前の物がこれだけ輝くってのは、凄いなと、初めて見たときに少し感動したのを覚えています。
特に音飛びやひどいノイズも無く聴けています。何よりもコレが一番大事なこと。

そして、マトリクス。

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「XEX-579-4」と刻まれているのが、わかりますでしょうか。
このケツが「1」であれば1stプレスとのこと。
僕のは「4」なので、4番目のプレスということなのだと思います。

しかし、どうやら話はこのマトリクスだけでは終わらないのです。
レコードには、先に書いたスタンパーやメタルマザーについても刻まれているとのこと!
さらには、当時のイギリスの税金に関する「タックスコード」という物まで刻まれているらしいのです。こちらも、見ていきます。

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レーベル面の左側にあるメタルマザーの番号が「3」、右側にあるスタンパーの番号が「GGM」。これは数字をアルファベットに割り振ったものだそうです。
つまり、3番目のメタルマザーから114番目に作られたスタンパーからプレスされた盤、という意味になります。

そして、タックスコード。

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信じられないくらい見づらいんですが、真ん中の穴の左右に、「KT」と刻まれています。これは1967年7月から1968年いっぱいの間使われたものだそうです。
つまり、その1年半の間に作られた盤だということです。

ここで一つ、ややこしい事案発生!
なんと、裏表でスタンパーは変わるとのこと。
なのでB面の方を見てみると・・・マトリックスは「XEX-580-4」、メタルマザーは「1」、スタンパーは「GPD(=160)」でした。


さらに!ジャケットにも違いがあるとのこと!

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ジャケットを作っていた業者が2社あったそうで、このErnest J. Day & CO.が作ったもの方が数が少なく、レアだそうです。やったぜ!

まとめます。
僕の持っている「ラバー・ソウル」は、1967年7月1日〜68年12月31日の期間に行われた4回目のプレス(生産)において作られたもの。
A面は3番目のメタルマザーから114番目に作られたスタンパーに、B面は1番目のメタルマザーから160番目に作られたスタンパーによってプレスされ、よりレアなジャケに入れられた盤であることが分かりました。
ラバー・ソウル」が1965年12月3日に発売されているので、少なく見積もっても、1stプレスから1年半後に作られたものとなります。それを初期プレスと呼んでよいのかは疑問ですし市場価格も分からないんですが、ひとまずスッキリしました!
コイツの価値がどのようなものかは分かりませんが、イギリスで出会った思い出や、53年もの時を経てもなお良い音を鳴らし続けるコイツの存在そのものはプライスレス!
これからも大事にしてきたいと思います。

しかしここで、さらなる問題が・・・。
実は「ラバー・ソウル」のレコードはコレ一枚しか持っていないので、肝心の音質を聞き分ける術を持っていないんですよね(笑)。
現行だとモノ盤のバラ売りって無いはずだし・・・。
持っている盤がある程度古いものだということは分かったものの、古いほうが音が良いのかどうかということは、結局分からずじまいなのでした。
いずれ機会があれば、試してみたいと思います。

それでは!

2019年私的ベストアルバムTOP10

かなり今更になってしまいましたが、ツイッターやインスタグラムには載せていた2019年のベストアルバムを、動画&コメント付きでご紹介したいと思います。

先にレビューを書いていたものは、そのリンクも貼ってあります。

洋楽邦楽ごちゃ混ぜです!それではどうぞ!

 

10. CHAI / PUNK

能天気な雰囲気ながらも胸を打つメロディとパワフルな演奏が魅力的。

海外での評価の方が高い印象ですが、国内でもしっかり人気を獲得しており、こういうインディバンドがウケるってのは非常に痛快であります。

https://dj-dagobah.hatenablog.com/entry/2019/03/12/113347

 

 

9. CARRY LOOSE / CARRY LOOSE

パン・ルナリーフィがついにアルバムをリリースできたという事が既にエモい。

中途半端にキャッチーでエモーショナルな2曲目がとにかく好き。

WACK作品には珍しく(むしろ初?)松隈ケンタが絡んでおらずSCRAMBLESの面々が作曲やプロダクションを担当。バラエティに富んでいる反面、雑多で荒削りな印象も受けるので、今後の洗練に期待したい。

とにかく今、一番ライブを見たいアーティストの1組。2020の目標にパンルナとのチェキ撮影を加えた。

 

 

8. GANG PARADE / LAST GANG PARADE

ツイッターを見ていただいている方ならご存知かと思いますが、2019年自分が一番金を使ったのがこのギャンパレ。いまWACKで最も勢いがあるのも彼女たち。

前作「GANG PARADE takes themselves higher !!!」の逆境に立ち向かう感じがかっこよすぎて、そこと比べるとどうしても余裕でこなしてる感が出てしまう。

作品自体は良いのだが、胸を打つ熱さが弱い。

メジャーデビュー作である次作「LOVE PARADE」も同様の感想。

とかなんとか言いつつ、今年も金を使わせていただく予定。

https://dj-dagobah.hatenablog.com/entry/2019/02/09/011948

 

 

7. Lizzo / Cuz I Love You

とにかく「juice」のカッコよさ。めちゃくちゃ気持ちいいです。

https://dj-dagobah.hatenablog.com/entry/2019/10/20/100702

 

 

6. Mega Shinnosuke東京熱帯雨林気候

ワンパクだけどニヒルDIY少年といった感じで、今時っぽい。

サウンド渋谷系USギターインディ的な匂いのする90年代ローファイ風味で、これまた今っぽい。

打ち込みの楽曲で勝負してくる若いミュージシャンが多い中、洋楽のインディロック的サウンドを鳴らす子が出てきたことに、もうオジさんの領域に入ってしまった僕はグッときています。

 

 

5. 始発待ちアンダーグラウンド / 始発待ちアンダーグラウンド

ジャケの時点でドイツ感というか、ニューウェーブの雰囲気が漂っているのだけど、音源そのものも、謡曲風のメロディにジョイ・ディビジョン的なリフとビートを乗せて、ニューウェーブ的なアプローチを持たせた曲が多いです。

まんまベルヴェッツ「サンデーモーニングなオケにポエトリーリーディングを乗せた「外にいた青」、60代ガールグループ的な「HELP ME」、サザン「真夏の果実を彷彿とさせる胸キュンメロディが泣ける「指先未来予想図」が個人的にヤバいです。

メンバーのビジュアルも良いです!

僕は、鼻にかかった声と脱力した歌い方がキュートなオクヤマ・ウイちゃん推し!

 

 

 

4. BiSH / CARROTS and STiCKS

初期の楽曲が持っていた、切なさや虚しさをバネに前に進もうとするエモさを取り戻した傑作。思わず涙が出ました。

https://dj-dagobah.hatenablog.com/entry/2019/07/13/002728

 

 

3. カネコアヤノ / 燦々

フォーク感のある哀愁漂うメロディや、瑞々しくも太さのある声に、2010年代の金延幸子という印象を受けた。どこか投げやりな歌い方や独特の言葉選びは田中茉裕も思わせる。

とにかく素晴らしいアルバム。今までチェックしていなかったのを本当に後悔しました。

 

 

2. THE YELLOW MONKEY / 9999

再結成から約3年、ようやく世に放たれた新作。

それだけで感動的なのに、しっかりと良い物を作ってくれたことにさらに感激。

これまでのイエモンを総括し、新たな旅立ちを歌う一曲目「この恋のかけら」が素晴らし過ぎて、もはや出オチ。最高です。

https://dj-dagobah.hatenablog.com/entry/2019/05/19/020348

 

 

1. GLAY / NO DEMOCRACY

2010年代最後の年に、やっと素晴らしいアルバムを持ってきてくれました!

全盛期ばりに歌いまくるギター、耳に残るメロディ。GLAYはこうでないと。

ちょっとだけ社会派な空気も持たせ、大人な作品にも仕上がっています。

J-POP好きも、インディロック好きにも聴いてもらいたい作品。

https://dj-dagobah.hatenablog.com/entry/2019/11/10/010734

 

洋邦ごちゃまぜと言いながら、洋楽はLizzoのみ(笑)。
ここ数年は本当にJ-POP的なものとアイドルに惹かれておりまして、この傾向はまだまだ続きそうです。
ただ今年はこの数年の中では良い作品との出会いが多く、もっともっと載せたい作品もありました!
2020年、すでに2月に入ってしまっていますが、さっそく良い作品出てます!
今年はもう少しペースアップしてレビュー書いていきたいと思っておりますので、2020年もよろしくお願い致します!

 

GLAY / NO DEMOCRACY

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平成を駆け抜けたGLAYによる令和初のアルバム。

今年でデビュー25周年を迎え、「民主主義」をテーマに据えた記念企画の目玉となる作品でもあります。

 

個人的には、2010年代のGLAY最高傑作だと思います。

 

他の作品が駄作であるとまでは言いませんが、正直なところ、100満点中30点の曲ばかりが並ぶ中で、たまに65点くらいの曲があるというのが僕の感想でして、悪くないけど、良くもないよねという状況でした。

また演奏に関しても特にギターに不満を持っており、「ギタリストが2人もいるくせなんでこんなにギターが前に出てこない曲ばかりなの?」とか、「『誘惑』とか『BELOVED』みたいな熱いギターソロを聴かせてくれよ!」というのが、2010年代のGLAYの曲に対して僕が持ち続けてきた思いです。

 

そんな僕の不満をようやく解消してくれたのが今作であります。

スッと入ってきて、かつしっかりと残るメロディを持つ良曲ばかり。

 

特に気に入っているのが、本作に先駆けてリリースされたEPにも収録されている「JUST FINE」。

教則本に載りそうな「いかにも感」がありながら、しっかりGLAYらしさも感じる力強いリフや、全盛期を彷彿させるHISASHIとTAKUROによるギターバトルやコンビネーションが最高に熱い一曲で、聴いた瞬間に今作への期待度が一気に上がりましたし、今でも毎日繰り返し聴いています。

キャッチーなメロディとダジャレのような詞もキュートで、GLAYの新たなアンセムとなるであろう名曲です。


その他、歌謡曲的な匂いも感じるメロディと疾走感がイカした、HISASHI作詞曲「MY NAME IS DATULA」。

黒いグルーヴに意外性を感じながら、サビではしっかりJ-POPしてくれる、冷めた恋や不倫を思わせる切ないスローバラード「氷の翼」。

チェンバーポップ的なアプローチのアレンジがこれまた新鮮な「誰もが特別だった頃」。

TERUによる、中年になった今の目線で父親の事を歌ったストレートな詞がグッとくる「COLORS」。

この辺りの楽曲が、個人的には凄くイイなと思っています。


また、社会派な楽曲の存在感が大きいのも今作の大きな特徴です。

「戦禍の子」はタイトルの通り戦時下で苦しみ死にゆく子供を描いていますが、聴き進めていくと戦地のみに留まらず、ここ日本でも問題になっている貧困や虐待に苦しむ子供にも当てはめる事ができる詞になっています。

それをあえてポップなメロディとアレンジに載せる事で、その悲哀が浮き彫りになっています。

元号」はこれまたタイトル通り、元号が変わるという時代の移り変わりを描いており、昭和という過去の後悔、平成という現在への疑問、そして令和という未来への希望が歌われています。

 

このアルバムのタイトルを聞いたとき、「民主主義」をテーマに掲げて25周年企画をやってきたはずなのに、「NO DEMOCRACY」という否定形になったのは何故なのかと、面食らってしまいました。

しかしそこには、「結局今の世の中は完全な民主主義にはなっていない」という思いが込められているそうで、上に挙げた社会派な曲の存在とリンクします。

そしてこれは完全な蛇足なのですが、この拙文のタイトルのように『GLAY NO DEMOCRACY』と並べた時に、『GLAYのデモクラシー』とも読めるなと思い、民主主義が達成されていない世の中で、自分たちなりの民主主義をやっていくという宣言を込めたダブルミーニングになっているのかな…と勝手に思いました。


令和元年のこの日本で、力強く響く作品になっていると思います。

そして、平成に産み落とされ、愛され続けている名曲達と共にこの作品が愛され、そして更なる愛すべき素晴らしい曲を作り続けてくれる事を、これからも楽しみにしています!

お師匠方、令和もよろしくお願い致します!